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ダイヤフラムポンプの脈動

目次

ダイヤフラムポンプの「脈動」とは

ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラム(隔膜)が前後に動くことで、液体や薬品などの流体を送り出す仕組みをもつポンプです。ダイヤフラムの動きによってポンプ内部の容積が変化し、吸入と吐出を繰り返しながら流体を移送していきます。

このような構造のため、流体は遠心ポンプのように常に一定の流れで送り出されるわけではありません。ダイヤフラムが押し出すタイミングごとに流れが生まれるため、吐出される流量や圧力が周期的に変化します。この周期的な流れの変動を「脈動(パルセーション)」と呼びます。

脈動はダイヤフラムポンプの構造上、必然的に発生する現象です。通常の使用では問題にならない場合も多いものの、配管条件などによっては大きな圧力変動として現れ、装置の振動や配管の揺れ、騒音の原因になることがあります。

そのため、ダイヤフラムポンプを設備に組み込む際には、脈動の特性をあらかじめ理解したうえで、ポンプの選定や配管設計を行うことが大切です。

脈動が発生・増大する主な要因

ダイヤフラムポンプの脈動は、ポンプの構造だけでなく、配管条件や流体の性質など複数の要因によって大きさや現れ方が変わります。ここでは、脈動が発生・増大する主な要因について見ていきます。

ダイヤフラムポンプの脈動が発生・増大する主な要因

ポンプの往復運動構造

ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムが前後に動くことで吸入と吐出を繰り返す「往復動ポンプ」の一種です。ダイヤフラムが前進すると流体が吐出され、後退すると吸入が行われるという動作を周期的に繰り返します。

このように、流体を押し出す動作が連続ではなく間欠的に行われる構造のため、吐出流量や圧力には周期的な変動が生じます。これが脈動の基本的な発生要因です。

ここで、実務上押さえておきたい重要なキーワードが「慣性抵抗」です。
配管内の流体(液柱)は質量を持っているため、ポンプの間欠的な動作によって「停止→急加速→急減速」を繰り返すと、流体が進み続けようとする(あるいは留まろうとする)慣性力が働き、大きな抵抗が生まれます。この慣性抵抗が、脈動による圧力のピークをさらに跳ね上げる要因となります。

また、ポンプの仕様や運転条件によっては、この脈動が比較的大きく現れることもあります。たとえば、単室構造のポンプでは吐出が片側のストロークのみで行われるため、流れの変動が大きくなる傾向があります。さらに、ストローク量が大きい場合や駆動数(ストローク数)が極端に低い場合も、1回あたりの押し出しと停止のメリハリが強くなるため、脈動がより目立ちやすくなります。

吐出側配管の条件

脈動の大きさは、ポンプ本体だけでなく吐出側の配管条件にも大きく左右されます。吐出配管の長さや内径、バルブや機器の配置などによって、流体が受ける抵抗が変わるためです。

たとえば、配管が長い場合や内径が細い場合、配管内にある液体の総質量が大きくなったり流速が速くなったりするため、先ほど触れた「慣性抵抗」や摩擦による配管抵抗が増大します。また、途中にフィルターやバルブなどの抵抗となる機器が設置されている場合も同様です。このような条件下では、ポンプから発生した圧力変動が配管内で増幅され、脈動のピークがより高くなる傾向があります。

さらに、配管の支持や固定が十分でない場合は、脈動による配管内の圧力変化がダイレクトな「配管振動」として現れるケースも。特に長距離の配管や細い配管では、こうした物理的な揺れや衝撃の影響が顕著に出るため注意が必要です。

流体の性質

脈動の現れ方は、移送する流体の性質によっても変わります。特に、流体の粘度や気体(エアー)の混入の有無は、配管内の圧力変動に大きな影響を与えます。

たとえば粘度が高い流体では、配管を通る際の摩擦抵抗(圧力損失)が大きくなります。そのため、ポンプが流体を押し出す際の圧力ピークが跳ね上がりやすく、低粘度の流体と比べて脈動による配管への負荷や振動がより顕著に現れる傾向があります。

一方で、少し注意が必要なのが流体中の気泡(エアー)です。気体は圧縮できる性質を持つため、配管内に気泡が混入すると、それがクッションのような役割を果たします。これにより「圧力変動(脈動のピーク)自体は吸収されて小さくなる」という現象が起きます。

しかし、これは決して良い状態ではありません。気泡の収縮・膨張によって吐出量が極端に不安定になり、本来の定量性が失われる原因となります。脈動の増大とは別のトラブルを引き起こすため、気泡の混入には十分な注意が必要です。

このように、ダイヤフラムポンプの脈動は「ポンプ構造・配管条件・流体特性」などが複雑に絡み合って現れる現象です。設備の運転条件に応じてこれらの要因を整理することで、脈動の大きさや対策を検討しやすくなります。

脈動によって生じる主なトラブル

ダイヤフラムポンプの脈動は、構造上ある程度避けられない現象ですが、条件によっては設備や運転状態に深刻な影響を及ぼすことがあります。ここでは、脈動によって生じやすい主なトラブルや影響について見ていきます。

配管振動や騒音

脈動によって配管内の圧力が周期的に変化すると、その力が配管や周辺機器に伝わり、振動として現れることがあります。特に配管が長い場合や支持が十分でない場合には、振動がより目立ちやすくなります。

振動が大きくなると、配管が激しく揺れたり、設備から「ガンガン」「ドンドン」といった異音が周期的に発生することも。こうした状態が続くと、騒音問題だけではなく、設備の破損を招く恐れもあります。

流量のばらつきと「オーバーフィード現象」

脈動が大きい場合、吐出される流体の流量が一定にならず、周期的に増減する状態になります。多くの用途では大きな問題にはなりませんが、薬品や添加剤などを一定量で供給する工程では、この変動がそのままプロセス条件のばらつきにつながります。

ここで特に知っておきたいトラブルが「オーバーフィード現象」です。
これは、配管内の流体が脈動によって勢いづく(慣性力を持つ)ことで、ポンプが吐出を終えて吸入動作に入っても流体が止まらず、惰性でそのまま流れ続けてしまう現象を指します。

オーバーフィード現象が起きると、ポンプで設定した以上の流量が勝手に出てしまいます。精密な定量供給が求められる現場では、このオーバーフィードを防ぐための対策が非常に重要です。

機器への負荷(摩耗や液漏れリスク)

脈動による圧力変動が大きい状態が続くと、配管や継手、バルブなどの機器に繰り返しの負荷がかかります。こうした圧力の波は、部品にとっては小さな衝撃が絶えず繰り返される状態と同じです。

短期間ですぐに問題が生じるとは限りませんが、長期的には部品の摩耗や、振動による継手部分のゆるみ、さらには液漏れや配管の破損といった重大なトラブルにつながる可能性があります。

設備の安定運転を維持し、予期せぬトラブルを防ぐためにも、脈動の影響を正しく把握し、次で紹介するような適切な対策を講じることが大切です。

ダイヤフラムポンプの脈動対策

ダイヤフラムポンプでは構造上ある程度の脈動が発生しますが、装置条件や運用方法によって影響を小さくすることは可能です。ここでは、設備設計やポンプ選定の場面で検討されることの多い代表的な対策を紹介します。

パルセーションダンパー(脈動吸収器)の設置

脈動対策としてもっとも一般的に用いられるのが、パルセーションダンパーの設置です。パルセーションダンパーは、ポンプの吐出側配管に取り付けることで圧力変動を吸収し、間欠的な流れを連続流に近づける役割を持ちます。

ダイヤフラムポンプから吐出される流体はストロークごとに押し出されるため、配管内では圧力が周期的に変動します。パルセーションダンパーを設置することで、この変動(圧力のピーク)を内部の空間で緩和し、流れをなだらかに整えることができます。

背圧弁(バックプレッシャーバルブ)の設置

パルセーションダンパーと併せてぜひ検討したいのが、背圧弁(バックプレッシャーバルブ)の設置ですサイホン止め弁などと呼ばれることもあります。

「オーバーフィード現象(流体が惰性で流れ続けてしまう現象)」を防ぐには、吐出側の配管に常に一定の抵抗(背圧)をかけておく必要があります。背圧弁を設置することで、ポンプが押し出す力以上の圧力がかかった時だけ弁が開き、流体が勝手に流れ出すのを防いで正確な定量性を保つことができます。

ただし、パルセーションダンパーは配管内に一定の圧力がかかっていないと、クッション効果を十分に発揮できません。そのため、脈動をしっかり抑えつつ精密な定量供給を行いたい場合は、「ダンパー」と「背圧弁」をセットで設置するのが設備設計の定石とされています。

多連ポンプの採用

ポンプ構造そのものから脈動を抑えるために、二連式や多連式のダイヤフラムポンプを採用する方法もあります。

このような多連ポンプでは、複数のダイヤフラムがそれぞれ「位相をずらして(タイミングを交互にして)」動作します。吐出の波がうまく重なり合うことで、流体が途切れることなく連続的に送り出されるようになり、結果として流量や圧力の変動が小さくなります。

そのため、脈動の影響をできるだけ元から絶ちたい用途や、パルセーションダンパーを使わずに安定した流量を確保したい設備では、多連構造のポンプが積極的に選定されることもあります。

配管設計の見直し

脈動による影響は、ポンプ本体だけでなく「配管設計の工夫」によっても大きく軽減することができます。配管径や長さ、支持方法などを適切に設計し、配管内の抵抗を減らすことがポイントです。

たとえば、吐出配管の途中で急激に径を細くしたり、直角の曲がり角を多用したりすると、そこが流体の抵抗となって圧力変動が大きくなりやすくなります。また、配管の支持が不足している場合には、脈動エネルギーが逃げ場を失い、激しい配管振動として現れる原因になります。

そのため、設備設計の段階では「配管はできるだけ太く、短く、滑らかな経路にする」ことや、「適切な位置にしっかりとした配管支持を設ける」ことが基本。必要に応じてパルセーションダンパーや背圧弁を追加するなど、ポンプと配管を含めたシステム全体で脈動対策を検討することが大切です。

まとめ

ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムの往復運動によって流体を移送する構造上、ある程度の脈動が必然的に発生するポンプです。脈動そのものは避けられない現象ですが、発生の仕組みや影響を正しく理解しておくことで、設備設計や運用の中で適切に対応することができます。

単にポンプ単体を見るのではなく、パルセーションダンパーと背圧弁のセット設置や、多連ポンプの選定、そして無理のない配管設計への見直しを行うことで、激しい振動や「オーバーフィード現象」といった厄介なトラブルは未然に防ぐことが可能です。

ダイヤフラムポンプ本来の性能を引き出し、設備を安定稼働させるためには、装置全体の条件を踏まえながら「ポンプ・配管・周辺機器」の総合的な視点で脈動対策を検討することが大切といえるでしょう。

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